契約書のチェックは,弁護士にとってはよくある業務の一つです。
ところで,契約締結に当たって,契約書の作成は絶対に必要なのでしょうか。
実は,契約とは,申込と承諾という,当事者の相対する意思表示が合致することによって成立することが原則であり(諾成契約),保証契約や定期賃貸借契約等,例外的に書面による合意が求められるもの以外は,口頭合意のみでも契約が成立することになります。
なので,実は契約書を作成することは,契約締結の際に,絶対に必要ではありません。
しかし,それにも関わらず,契約に際して契約書を作成する,ということは一般的に行われています。
これは一体なぜでしょうか。
それは,契約書を作成することで,後の紛争を回避することが期待できるからです。
お金を貸した,いやあれはもらったものだ,というような争いは頻繁におこりますが,消費貸借契約書をきちんと作成しておけば,相手方が後に翻意したとしても,契約書を証拠として,借りたお金を返してもらうよう請求することができます。
また,当事者の間で,契約の内容を一義的に明確にしておくことで,当事者が合意の内容を忘れてしまうといったことを防ぐこともできます。
また,ビジネス法務上,コンプライアンスの観点も重要です。法令を順守したことについて何らかの書面を残すことがコンプライアンスの観点から要請されることが多いため,その重要な側面の一つとして契約書を作成する傾向が強くなっています。
こういった観点から,契約成立の要件でなくても,契約書を作成することが実務上一般的に行われているのです。
ですので,契約書のチェックの際には,上記の趣旨にかなったものになっているか,という大きな視点を持って実施することとなります。
では,具体的にどのような点をチェックするのか,ということについては,次のコラムで解説します。
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